館長からのメッセージ(2021年始にあたって)
謹んで初春のご挨拶を申し上げます。
昨年初頭から始まった新型コロナウィルスの世界的感染により、国立新美術館でも多くの展覧会が延期、中止そして会期変更をせまられ、2020年は展覧会の大調整が続く1年となりました。
毎年賑わいを見せていた館内から人気(ひとけ)が引いてしまった美術館の姿は、来館者が美術館にとって、いかにかけがえのない存在であったかを再認識させるものでした。3か月以上の臨時休館を経て、当館は6月にようやく開館いたしました。厳しい状況下、来館して下さった方々からは、「ゆったりとした理想的な鑑賞環境で落ち着いて作品を楽しむことができた」、「実際に作品を見ることの豊かさを実感した」「やっと美術館に来ることができて気持ちが救われた」という感想もいただきました。
今までにないこうした体験を経て、美術館に出向き五感を駆使して作品を見る実体験は、デジタルによる体験とは別のものであり、私たちは、その豊かさを伝える場の重要性を改めて噛みしめています。
2021年1月21日、当館は14年目の誕生日を迎えます。コロナ禍の収束はまだ予断を許しませんが、今年は美術、デザイン、ファッションなどの意欲的な企画展並びに公募展を展開し、アートセンターとして、多様な事業に積極的に取り組んでまいります。
1月30日からの「DOMANI・明日展 2021 文化庁新進芸術家海外研修制度の作家たち」を皮切りに、2月は国立新美術館のロゴをデザインした佐藤可士和の大規模な個展となる「佐藤可士和展」、6月からは、日本の戦後ファッションを通観する「ファッション イン ジャパン1945-2020―流行と社会」、9月は晩年の切り紙絵を中心に紹介する「マティス 自由なフォルム」などを開催いたします。
2021年が皆様にとって、美術館に来館する時間がもどり、健康で心豊かに過ごせる年となりますように。
2021年1月
国立新美術館長 逢坂恵理子