国立新美術館開館15周年記念 李禹煥
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- 開催終了
- 企画展
国立新美術館では開館15周年を記念して、国際的にも大きな注目を集めてきた「もの派」を代表する美術家、李禹煥(リ・ウファン、1936年生)の東京では初めてとなる大規模な回顧展を開催します。国立新美術館では開館15周年を記念して、国際的にも大きな注目を集めてきた「もの派」を代表する美術家、李禹煥(リ・ウファン、1936年生)の東京では初めてとなる大規模な回顧展を開催します。
東洋と西洋のさまざまな思想や文学を貪欲に吸収した李は、1960年代から現代美術に関心を深め、60年代後半に入って本格的に制作を開始しました。視覚の不確かさを乗り越えようとした李は、自然や人工の素材を節制の姿勢で組み合わせ提示する「もの派」と呼ばれる動向を牽引しました。また、すべては相互関係のもとにあるという世界観を、視覚芸術だけでなく、著述においても展開しました。
李の作品は、芸術をイメージや主題、意味の世界から解放し、ものともの、ものと人との関係を問いかけます。それは、世界のすべてが共時的に存在し、相互に関連しあっていることの証なのです。奇しくも私たちは、新型コロナウィルスの脅威に晒され、人間中心主義の世界観に変更を迫られています。李の思想と実践は、未曾有の危機を脱するための啓示に満ちた導きでもあります。
本展では、「もの派」にいたる前の視覚の問題を問う初期作品から、彫刻の概念を変えた<関係項>シリーズ、そして、静謐なリズムを奏でる精神性の高い絵画など、代表作が一堂に会します。また、李の創造の軌跡をたどる過去の作品とともに、新たな境地を示す新作も出品される予定です。
『李禹煥:ドキュメンツ 2022-23』
本書は展覧会カタログ『李禹煥』の補遺として作成されました。国立新美術館での展示風景写真、兵庫県立美術館での展示風景写真、展覧会カタログ『李禹煥』制作時には展覧会への出品予定がなかったため掲載することができなかった図版、そして展覧会関連イベントとして開催されたシンポジウムの記録で構成されます。
本書の内容はPDFでご覧いただけます。
『李禹煥:ドキュメンツ 2022-23』
開催概要
- 会期
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毎週火曜日休館
- 開館時間
10:00~18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで- 会場
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国立新美術館 企画展示室1E
〒106-8558東京都港区六本木7-22-2 - 主催
国立新美術館、朝日新聞社、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁
協力:SCAI THE BATHHOUSE
令和4年度日本博主催・共催型プロジェクト
- 観覧料
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当日 1,700円(一般)、1,200円(大学生)、800円(高校生) - 巡回情報
兵庫県立美術館:2022年12月13日(火)~2023年2月12日(日)
- お問合せ
050-5541-8600(ハローダイヤル)
作家プロフィール
李禹煥(リ・ウファン)李禹煥(リ・ウファン) 1936年、韓国慶尚南道に生まれる。ソウル大学校美術大学入学後の1956年に来日し、その後、日本大学文学部で哲学を学ぶ。1960年代末から始まった戦後日本美術におけるもっとも重要な動向の一つ、「もの派」を牽引した作家として広く知られている。1969年には論考「事物から存在へ」が美術出版社芸術評論に入選、1971年刊行の『出会いを求めて』は「もの派」の理論を支える重要文献となった。『余白の芸術』(2000年)は、英語、フランス語、韓国語等に翻訳されている。50年以上に渡り国内外で作品を発表し続けてきた李は、近年ではグッゲンハイム美術館(ニューヨーク、アメリカ合衆国、2011 年)、ヴェルサイユ宮殿(ヴェルサイユ、フランス、2014年)、ポンピド ゥー・センター・メッス(メッス、フランス、2019 年)で個展を開催するなど、ますます活躍の場を広げている。国内では、2010年に香川県直島町に安藤忠雄設計の李禹煥美術館が開館している。本展は、「李禹煥 余白の芸術展」(横浜美術館、2005年)以来の大規模な個展となる。 |
みどころ
自己は有限でも外部との関係で無限があらわれる。表現は無限の次元の開示である。
────李禹煥
本展は、李禹煥が自ら展示構成を考案しました。1960年代の最初期の作品から最新作まで、李の仕事と経過と性格を網羅的に浮き彫りにするものです。本展は、彫刻と絵画の2つのセクションに大きく分かれています。彫刻と絵画の展開の過程が、それぞれ時系列的に理解できるように展示されます。また、野外展示場には石とステンレスを用いた大型作品が設営される予定です。
展覧会冒頭に展示されるカンヴァスにピンクの蛍光塗料を用いた三連画《風景I》、《風景II》、《風景III》(すべて1968年)は、東京国立近代美術館で開催された「韓国現代絵画」展(1968年)に出品された李の初期の代表作です。蛍光塗料を用いたレリーフ作品《第四の構成A》と《第四の構成B》(ともに1968年)と同様、視覚を攪乱させるような錯視効果を強く喚起する作品です。トリッキーな視覚効果を引き起こすこれらの作品は、1960年代末の日本に興隆していた傾向を反映しています。
1968年頃から制作された〈関係項〉は、主に石、鉄、ガラスを組み合わせた立体作品のシリーズです。これらの素材には殆ど手が加えられていません。李は、観念や意味よりも、ものと場所、ものと空間、ものともの、ものとイメージの関係に着目したのです。1990年代以降、李はものの力学や環境に対しても強く意識を向けるようになり、石の形と鉄の形が相関する〈関係項〉も制作しています。より近年の作品では、環境に依存するサイトスペシフィックな傾向が強まっており、フランスのラ・トゥーレット修道院で発表された《関係項―棲処(B)》(2017年)はその典型です。
李は2014年にフランスのヴェルサイユ宮殿を舞台に個展を開催しました。そこでは2つの石が両脇を支えるように配された、ステンレスの巨大なアーチ状の野外彫刻《関係項―ヴェルサイユのアーチ》が設営され、大きな話題となりました。ひとたび巨大なアーチを通り抜けた観者は、周囲の空間に新鮮な印象を受ける経験をすることになるでしょう。2019年には香川県の直島町に、《無限門》が恒久設置されました。本展では、国立新美術館の野外展示場でアーチ状の野外彫刻の新作が披露される予定です。
1971年にニューヨーク近代美術館でのバーネット・ニューマンの個展に刺激を受けた李は、幼年期に学んでいた書道の記憶を思い起こし、絵画における時間の表現に関心を強めました。1970年初頭から描き始めた〈点より〉と〈線より〉のシリーズは、色彩の濃さが次第に淡くなっていく過程を表しています。行為の痕跡によって時間の経過を示すこのシステマティックなシリーズは、10年ほど続けられます。
1980年代に入ると、〈風より〉と〈風と共に〉のシリーズに顕著なように、画面は荒々しい筆遣いによる混沌とした様相を呈してきます。80年代終わり頃からはストロークの数は少なくなり、画面は次第に何も描かれていない空白が目立つようになります。2000年代になると、〈照応〉と〈対話〉のシリーズが示すように、描く行為は極端に限定され、ほんの僅かのストロークによる筆跡と、描かれていない空白との反応が試されます。〈点より〉や〈線より〉と対照的に、これらは空間的な絵画のシリーズと言えます。
李禹煥鑑賞ガイド
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「李禹煥」展 作家インタビュー映像
「李禹煥」展 メイキング映像
「李禹煥」展 展示映像
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