リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s
LIVING Modernity: Experiments in the Exceptional and Everyday 1920s–1970s
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- 開催予定
- 企画展
本展覧会では、20世紀にはじまった住宅をめぐる革新的な試みを、衛生、素材、窓、キッチン、調度、メディア、ランドスケープという、モダン・ハウスを特徴づける7つの観点から再考します。そして、特に力を入れてご紹介する傑作14邸を中心に、20世紀の住まいの実験を、写真や図面、スケッチ、模型、家具、テキスタイル、食器、雑誌やグラフィックなどを通じて多角的に検証します。
1920年代以降、ル・コルビュジエ(1887–1965年)やルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(1886–1969年)といった多くの建築家が、時代とともに普及した新たな技術を用いて、機能的で快適な住まいを探求しました。その実験的なヴィジョンと革新的なアイデアは、やがて日常へと波及し、人々の暮らしを大きく変えていきました。
本展覧会は、当代の暮らしを根本から問い直し、快適性や機能性、そして芸術性の向上を目指した建築家たちが設計した、戸建ての住宅をご紹介するものです。1920年代から70年代にかけて建てられたそれらのモダン・ハウスは、国際的に隆盛したモダニズム建築の造形に呼応しつつも、時代や地域、気候風土、社会とも密接につながり、家族の属性や住まい手の個性をも色濃く反映しています。理想の生活を追い求めた建築家たちによる暮らしの革新は、それぞれの住宅に固有の文脈と切り離せない関係にあるのです。
一方、それらの住宅は、近代において浮上してきた普遍的な課題を解決するものでもありました。身体を清潔に保つための衛生設備、光や風を取り込む開放的なガラス窓、家事労働を軽減するキッチン、暮らしを彩る椅子や照明などの調度、そして住まいに取り込まれた豊かなランドスケープは、20世紀に入り、住宅建築のあり方を決定づける重要な要素となったのです。そして、こうした新しい住まいのイメージは、住宅展示や雑誌などを通じて視覚的に流布していきました。
今から100年ほど前、実験的な試みとして始まった住まいのモダニティは、人々の日常へと浸透し、今なお、かたちを変えて息づいています。本展覧会は、今日の私たちの暮らしそのものを見つめ直す機会にもなるでしょう。
開催概要
- 会期
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休館日:毎週火曜日
※ただし4月29日(火・祝)と5月6日(火・祝)は開館、5月7日(水)は休館 - 開館時間
10:00~18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで- 会場
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国立新美術館 企画展示室1E、企画展示室2E
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2 - 主催
国立新美術館、東京新聞、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁
後援
一般社団法人日本建築学会、公益社団法人日本建築家協会協賛
鹿島建設株式会社、TOTO株式会社、株式会社長谷工コーポレーション、YKK AP株式会社、
大和ハウス工業株式会社、株式会社藤木工務店協力
ミサワホーム株式会社、株式会社 竹中工務店、株式会社新建築社、株式会社アルク、
ウシオライティング株式会社- 観覧料
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一般1,800円、大学生1,000円、高校生500円
※中学生以下は入場無料
※障害者手帳をご持参の方(付添の方1名を含む)は入場無料
一部無料でご覧いただける展示がございます。 - 巡回情報
兵庫県立美術館
2025年9月20日(土)~2026年1月4日(日)(予定)- お問合せ
050-5541-8600(ハローダイヤル)
クラウドファンディングについて
本展の開催費用の一部を募ることを目的に、1,000万円を目標としてクラウドファンディングを実施します。
クラウドファンディングでご支援いただいた資金は、ミース・ファン・デル・ローエが設計した未完のプロジェクト「ロー・ハウス」を原寸大で実現するための展示制作費に充てる予定です。〈観覧無料エリアに設置予定〉
クラウドファンディング詳細ページ:https://readyfor.jp/projects/nact_2024
募集期間:2024年11月18日(月)~2025年1月31日(金)23時
みどころ
戸建ての個人住宅 私たちの暮らしにかかわる展覧会
今日の私たちにとって、居間やキッチンを間取りの中心に据え、快適な衛生設備と家族の個室を備えた戸建て住宅は、普遍的な住まいに見えるかもしれません。しかし、歴史的に見るとそれは、戦後に核家族が主流となるのにつれて定着した比較的新しい住まいの形式です。20世紀に普及した戸建て住宅は、住み手の理想を色濃く反映した、多様な暮らしを生み出してきました。こうした住まいの革新が国際的に広がっていった1920年代から70年代までに着目する本展覧会では、14邸の住宅を中心に、私たちの暮らしの礎を見直します。
有名建築家たちの住まいに対する熱いまなざし
本展覧会で取り上げる住宅を設計したのは、大規模建築も数多く手がけた著名な建築家たちです。そうした時代をリードする建築家たちの創作の根底には、日常的な暮らしへの大きな関心があったのです。今回ご紹介する住宅の多くは、建築家たちの自邸です。それらは新たな建築観を示すかっこうの実験の場でした。細部まで工夫を凝らしたこだわりの自邸からは、機能や快適さの探究はもちろん、住まうことの楽しさや喜びへの真摯なまなざしも垣間見ることができます。
国内外から集結するさまざまな作品とイメージ
本展覧会には、国内はもとより、アメリカやヨーロッパ、ブラジルなどから、貴重な作品が集結します。図面、模型、外観や内観の写真に加え、ミース・ファン・デル・ローエやリナ・ボ・バルディなど、建築家自らが描いたドローイング、建築家が住まいとともにデザインした家具や生活道具、映像など、バラエティに富んだ内容をご紹介します。本展覧会は、多様な作品とイメージを通じて、住まいを多角的に見直すものです。
100年前に誕生したモダン・ハウス、今も使われている名作家具や照明器具
本展覧会で取り上げる住宅のデザイン、そして多くの建築家が住まいにあわせて手がけた椅子や机、照明器具は、今の私たちから見ても非常に「モダン」です。家具や器具の多くは、今なお生産され、使い続けられています。日ごろ何気なく目にしている名作のルーツには、建築家やデザイナーたちの、機能と造形に対する時代を越えた普遍的な問いがあったといえるでしょう。
ミース・ファン・デル・ローエの未完のプロジェクト「ロー・ハウス」を原寸大で実現
1階の企画展示室1Eでの展示に続き、2階の天井高8メートルの企画展示室2Eでは、ミース・ファン・デル・ローエの「ロー・ハウス」プロジェクトを、原寸大で実現します。また2階の会場では、同時代にデザインされて、現在も使われている名作家具を体感できるコーナーを設け、VR体験ができるイベントも開催します。そのほか、トークイベントなども、この2階の会場内で行います。なお、2階の会場は、ミースの「ロー・ハウス」の体験を含めて、どなたでも無料でお楽しみいただけます。
藤井厚二 |
リナ・ボ・バルディ |
広瀬鎌二 |
フランク・ゲーリー |
オットー・リンディッヒ |
マルセル・ブロイヤー |
展示構成
本展覧会では、特に力を入れてご紹介する傑作14邸を中心に、20世紀の建築家たちの挑戦を以下の7つの観点に着目してご紹介します。
衛生: 清潔さという文化
HYGIENE: creating a culture of cleanliness
2020年に始まった新型コロナウイルス感染症の流行からも分かるように、古来、感染症の克服は、人類が生き延びるための重要な課題のひとつです。急速に都市化が進み、人々が密集して暮らすようになった19世紀のヨーロッパでは、感染症から身を守るため、公衆衛生に対する関心が深まりました。そして、病原体を特定し、適切に処方されるようになった医学の進歩にともなって、住まいも科学的に見直されるようになりました。本展覧会でご紹介するモダン・ハウスの浴室や洗面には、清潔さや健康といった近代における衛生と身体への眼差しがあらわれています。
素材: 機能の発見
MATERIALITY: discovering physical functions
20世紀の初頭、鉄やコンクリートによる新たな構造法が広まり、住まいの建設に用いられるようになりました。ガラスの大量生産も可能になり、住まいはそれまでの重々しい素材から解放されていきます。時代の変化に刺激をうけた建築家たちは、鉄やガラスのみならず、木材やタイル、テキスタイルといった伝統的な素材にも、新しい住まいの快適さを生み出す可能性を探究しました。本展覧会では、モダン・ハウスにおける新たな素材の使われ方を紹介します。
窓: 内と外をつなぐ
WINDOW: framing indoor / outdoor living
鉄やコンクリートによる新たな構造法の導入によって、大きく変容したのが窓でした。ヨーロッパのかつての石造りの建物では、開口部の大きさに限りがありました。しかし、強度を増した建物には大きなガラス窓を設置することができ、そこから日光や風を得るだけでなく、窓を閉めても眺望を楽しむことができました。このことは、それまでの屋内と屋外の境界に対する考え方を本質的に変え、窓を通じて、内と外が浸透するようになったのです。本展覧会で取り上げるモダン・ハウスの個性的な窓をとおして、内と外をつなぐ豊かな演出をみることができるでしょう。
キッチン: 現代のかまど
KITCHEN: modernizing the hearth
工業が発展した19世紀には、労働の効率が重視されるようになりました。こうした考えは住まいにも入り込み、キッチンに反映されていきます。1926年にドイツのフランクフルトの集合住宅のために設計されたフランクフルト・キッチンは、少ない動作で効率よく調理や配膳ができるように工夫された、いわゆるシステム・キッチンの先駆けでした。炊事場は、ヨーロッパでは地下、日本では土間など、住まいの裏に置かれました。しかし、核家族が主流になるにつれてそれは、食堂や居間に近い、家族が集う明るく中心的な空間に組み入れられるようになったのです。そこには、女性の多様な生き方も反映されています。モダン・ハウスのキッチンには、家事をとりまく社会的な考え方の変容が映しとられています。
調度: 心地よさの創造
FURNISHINGS: creating comfortable living
19世紀のヨーロッパでは、過去の様式を脈絡なく模倣し、質的にも粗悪な量産品が巷にあふれたことへの反省から、さまざまなデザイン運動が生まれました。20世紀にこれを引き継ぎ、後の世に大きな影響を与えたのが、1919年にドイツのヴァイマールに開校したバウハウスでした。バウハウスは、織物、金属器、照明や家具など、身の廻りの品々に、機械生産にも適合したシンプルで機能的なデザインをほどこしました。また、調度にも統一感や快適さをもとめた多くの建築家たちは、家具などを自らデザインしました。本展覧会では、人々の美意識までをも変えたバウハウスの作品群をはじめとし、20世紀の人々の暮らしを彩ったさまざまな調度を紹介します。
メディア: 暮らしのイメージ
MEDIA: visualizing the dwelling
19世紀における写真の発明や印刷技術の向上を経て、20世紀に入ると、マスメディアとしての新聞や雑誌の影響力がますます強くなりました。建築家やデザイナーもこれを強く意識し、ル・コルビュジエや藤井厚二などは、自らの考えを活字やイメージで世に広めようとしました。また、1927年にドイツ工作連盟が開催した「住居」展など、20世紀以降、戸建て住宅の普及にともなって住宅の展示も広く行われるようになりました。本展覧会では、人々を魅了する理想的な暮らしのイメージを伝えたメディアとして、書籍 や雑誌、住宅展示などを取り上げます。
ランドスケープ: 住まいと自然
LANDSCAPE: living in nature
住むための人工的な空間を、地形を含めた自然の環境にどう位置付けるのか。自然との調和をもとめるランドスケープをめぐる課題は、20世紀のモダン・ハウスにとっても重要な問いとなりました。私たちは、大きなガラス窓を通じて、変化する四季、成長を続ける植生を身近に感じることができます。このことは窓だけでなく、衛生にも密接にかかわります。急速な近代化によって失われた自然とのつながりを住まいに取り戻すことは、心身の健康にもつながるからです。本展覧会では、ランドスケープという観点から、住まいと自然を調和させようという試みについて考察します。