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NACT View 03 渡辺 篤(アイムヒア プロジェクト) 私はフリーハグが嫌い

  • 開催終了
  • 小企画

国立新美術館では2022年より新規事業として美術館のパブリックスペースを使った小企画シリーズ「NACT View」を開始しました。黒川紀章氏が設計した建築は、スペクタクルでありつつ、細部にまで意匠が凝らされています。多くの人が憩い、通り抜ける広場のようなパブリックスペースで、多くの皆さまに楽しんでいただけるよう、若手から中堅の美術家、デザイナー、建築家、映像作家を招聘し、現代の多様な表現をご紹介します。

第3回は、自身も元当事者であるひきこもりにまつわる課題に向き合い、当事者との協働プロセスに重点を置き、社会に直接的な働きかけを行う活動家でもある渡辺篤(わたなべ・あつし、1978生まれ)が2021年から継続的に行っているプロジェクト「私はフリーハグが嫌い」に関連するインスタレーションと映像作品を展示します。
孤立を感じる人の声に耳を傾け、自身の経験を背景に当事者とともに作り上げる渡辺(アイムヒア プロジェクト)の作品は、ここにいない誰かの存在に気づきを与え、遠くにいる誰かに対してどのような想像を働かせるかという問いへとつながります。同時に、それは、美術館を訪れることができる鑑賞者が、その場に来ることが困難な他者と向き合う一つの機会となるでしょう。

※2018年より渡辺はひきこもりの当事者や孤立感を感じている人と協働して作品を制作する「アイムヒア プロジェクト」を展開。渡辺の呼びかけによって集まる人々と共に作り上げる作品に関しては、作家名は「渡辺篤(アイムヒア プロジェクト)」となります。

開催概要

会期

開館時間

美術館の開館時間に準ずる

会場

国立新美術館 1Fロビーほか
〒106-8558東京都港区六本木7-22-2

主催

国立新美術館

観覧料

無料

お問合せ

050-5541-8600(ハローダイヤル)

作家プロフィール

渡辺 篤(わたなべ・あつし)

展示のポイント

インスタレーションと映像の新作によって、美術館のパブリックスペースを生かした複合的な展示を展開

今回、渡辺は2021年から続けている「私はフリーハグが嫌い」のプロジェクトと関連するインスタレーションと映像作品を制作。国立新美術館のパブリックスペースで初公開します。

ここにいない誰かの存在を示す光の作品も新作と共に展示

美術館に来ることが難しいひきこもり生活を送る人々が遠隔操作をすることで光る球体状のライトの作品も展示。美術館の空間だけでは完結しない、物理的な制約を超えた展示を実現します。

展示作品

《私はフリーハグが嫌い》

2023年
バックライトフィルム、ライトボックス、ドア、木材ほか

2021年、渡辺は新型コロナのパンデミックが収束した後の社会、すなわちスキンシップが再開する世界における孤立、孤独問題についても考察し、「私はフリーハグが嫌い」のプロジェクトを始めました。フリーハグとは、2000年代後半以降渋谷などで流行し、街頭で「FREE HUG」と書かれたサインを掲げる者とその呼びかけに応じた者がハグをする行為です。渡辺はこのフリーハグを他者と容易につながることのできる象徴的なアクションと考えます。そして、目の前にいる人にのみ意識を向けがちな既存の社会包摂のあり方を批評的に捉え、インターネットで募集したひきこもりの人々と対話を重ね、直接対面し、ハグを行う活動を続けています。渡辺自身、過去に一定期間誰の目にも触れずに生きていた元ひきこもり当事者であり、自身の経験をもとにし、かつ当事者への尊重を踏まえた活動プロセスも含めて作品化することにより、目に見えるものにしか意識を向けづらい社会への批判と想像の及ばない向こう側にも他者が生きていることを訴えています。

《私はフリーハグが嫌い》は、この現在進行形のプロジェクトから副次的に生まれた造形作品です。それは、渡辺とひきこもり当事者たちとの活動を記録したアーカイヴとも言えます。今回渡辺は、プロジェクト参加者と対面を行ってきた活動のうち、8名とのエピソードとハグの様子の写真をライトボックスに収めました。そして、木製のドアの裏にそのライトボックスを組み合わせています。この8点の立体物は、国立新美術館1階の企画展示室前に置かれ、モニュメントのように立ち現れます。作品の構造とそれが置かれる場、そして作品の見え方それぞれが、遠くにいる誰かに対してどのように想像を働かせるかという問いへとつながっています。

日没後から作品が色彩豊かに発光します。

《ここに居ない人の灯り》

2021年/2023年
LED電球、ライトカバー、スマートプラグ、Wi-Fi、スマートフォン、見守りカメラ アイムヒアプロジェクト蔵

2020年、渡辺は「同じ月を見た日」というプロジェクトの中で、コロナ禍において孤立感を抱えた人々に月の写真の撮影を呼びかけ、その写真を集めた作品を制作しました。《ここに居ない人の灯り》は当初この「同じ月を見た日」のプロジェクトの中で発表されましたが、国立新美術館の展示において、作家はこの球体状のライトの作品を新作と関連付け、ポスト・コロナにおける孤立や孤独という社会課題への応答として示しています。本企画のバージョンにおいてライトのスイッチは、渡辺の募集に対して応募をした有志のひきこもりの当事者たちが操作します。点滅する光は、美術館を訪れることができる人たちに、その場に来ることが困難な人を想像させるものとして機能します。

《ここに居ない人のためのフリーハグ》

2023年
ビデオプロジェクション、60分

“FREE HUGS FOR ABSENTEES”(ここに居ない人のためのフリーハグ)というネオンサインを掲げた渡辺が渋谷駅前で10時間連続して立ち続ける様子を捉えたノーカット長回しによるタイムラプス撮影による映像です。1階のアトリウムで存在感を放つ高さ16メートルのコンクリートのコーン型の構造物に大きく投影される映像は、目の前にいない誰かの存在への意識を喚起する作家の姿を都市空間に掲げられる野外広告のように映し出します。

《私はフリーハグが嫌い(ビル屋上でのアクション)》

2023年
ビデオプロジェクション、60分

乃木坂駅と美術館とを繋ぐ階段エリアに投影されたこの映像は、今回の展覧会の導入に位置付けられています。それは、厳しい暑さの中、横浜にあるビルの屋上で時に強風に煽られたりもしながら「私はフリーハグが嫌い」というボードを持つ作家を国立新美術館の通常の開館時間と同じ10時間連続して撮影したものです。「フリーハグ」とは、見知らぬ誰かに向けてボードを掲げ、希望する人とハグを行う友好や平和などを意味するアクションです。過去に足掛け3年の深刻なひきこもりの経験を持つ渡辺自身が現在も居住する横浜の住宅街をビル屋上から見下ろし、「フリーハグ」を批判する意味を込めてネオンライト製のプレートを掲げ続けています。渡辺は、多くの社会包摂をはじめとする他者に対しての善意とは、姿の見える者や想定内の他者にしか届けられていないという不可能性や矛盾について訴えています。ここで作家は誰に知られることもなくひとり孤独に、姿の見えない誰か、または、ここにいない誰かへ祈りを込めているのです。

リーフレット

NV03AW.jpg
NACT View 03 渡辺 篤(アイムヒア プロジェクト) 私はフリーハグが嫌い [7.6 MB]

印刷物デザイン 岡﨑真理子+田岡美紗子+田中ヴェートリ美南海(REFLECTA, Inc.)

「NACT View」シリーズとは

「NACT View」とは

「NACT View」は、若手から中堅の美術家、デザイナー、建築家、映像作家といった様々なジャンルの作家を、国立新美術館のパブリックスペースを使用して紹介する新たな小企画シリーズです。シリーズ名は、英語の館名「The National Art Center, Tokyo」の略称「NACT」と、「眺め、風景/見方、考え方」を意味する「View」に由来します。国立新美術館のパブリックスペースは、展覧会を鑑賞する人だけでなく、カフェやレストラン、ライブラリーといった施設の利用者から、ただ建物を通り抜ける人まで、様々な人が行き交う場所です。「NACT View」は、このような空間に作品を展示することで、美術館を訪れるあらゆる人が、気軽に現代の表現に親しめる機会となることを目指しています。今後、本シリーズと連動したワークショップやトークなども行っていく予定です。

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