名作への期待に胸膨らませて会場を訪れた来館者を先ずお迎えするのは、肖像画の数々です。17世紀のオランダを代表する画家フランス・ハルスの傑作、《男の肖像》にはじまり、フランス古典主義の完成者アングルが愛情を込めて描き出した妻の肖像、さらには友人シスレーをモデルにルノワールが描いた若き日の半身像など、各時代を彩る名人たちの筆による個性豊かな肖像画が並びます。これらの作品により、西欧絵画200年の伝統とその表現の推移、さらにビュールレ・コレクションの広がりと厚みを体感することができます。
展覧会ホームページ:http://www.buehrle2018.jp/
展覧会概要
スイスの大実業家エミール・ゲオルク・ビュールレ(1890-1956年)は、生涯を通じ絵画収集に情熱を注いだ傑出したコレクターとして知られています。主に17世紀のオランダ絵画から20世紀の近代絵画に至る作品、中でも印象派・ポスト印象派の作品は傑作中の傑作が揃い、そのコレクションの質の高さゆえ世界中の美術ファンから注目されています。 この度、ビュールレ・コレクションの全ての作品がチューリヒ美術館に移管されることになり、コレクションの全体像を紹介する最後の機会として、日本での展覧会が実現することとなりました。
本展では、近代美術の精華といえる作品64点を展示し、その半数は日本初公開です。絵画史上、最も有名な少女像ともいわれる《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》、スイス国外に初めて貸し出されることになった4メートルを超えるモネ晩年の睡蓮の大作など、極め付きの名品で構成されるこの幻のコレクションの魅力のすべてを、多くの方々にご堪能いただきたいと思います。
会期 | 2018年2月14日(水)~5月7日(月) 毎週火曜日休館 ※ただし5月1日(火)は開館 |
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開館時間 | 10:00-18:00 ※毎週金曜日・土曜日、4月28日(土)~5月6日(日)は20:00まで ※入場は閉館の30分前まで |
会場 | 国立新美術館 企画展示室1E 〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2 |
主催 | 国立新美術館、東京新聞、NHK、NHKプロモーション |
後援 | 外務省、スイス大使館 |
協賛 | ジュリアス・ベア・グループ、損保ジャパン日本興亜 |
協力 | スイス政府観光局、スイス インターナショナル エアラインズ、日本貨物航空、ヤマトロジスティクス |
本展は,政府による美術品補償制度の適用を受けています。
観覧料(税込) |
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お問合せ | 03-5777-8600(ハローダイヤル) |
展覧会の構成
1章 肖像画
2章 ヨーロッパの都市
この章ではヴェネツィア、ロンドン、パリといったヨーロッパの大都市を描いた作品をご覧いただきます。ビュールレ・コレクションの中核は、19世紀後半の印象派、ポスト印象派の作品ですが、大学で美術史を学んだビュールレは、自らのコレクションにも歴史的な広がりを与えたいと考えていました。18世紀前半のカナレットが描いた写真のようなヴェネツィアの風景。それから百数十年後の、色彩の中に全てが溶け合うようなモネのロンドンの風景。二つの作品は風景表現の歴史と画家の個性のあり方を明確に教えてくれます。
3章 19世紀のフランス絵画
19世紀のフランス美術の最も大きな変化といえば、主題性が希薄になっていく点があげられます。つまり何を描くかではなく、いかに描くか。神話や宗教、歴史といった、それまで最も重要と考えられていた主題が後退し、風景や静物など、日常の何気ない一瞬を捉えたような作品が画家たちの関心の的となっていきます。この章では、ドラクロワやシャヴァンヌなど、古典的な主題を取り上げながらその様式で近代への扉を開いた画家たちや、しばしば近代絵画の父と称せられるマネを中心に紹介します。
4章 印象派の風景 ―マネ、モネ、ピサロ、シスレー
印象派の画家たちは、肖像、静物、風俗など様々な主題に挑戦しましたが、最も熱心に取り組んだ画題が風景でした。パリ近郊、セーヌ河畔の豊かな自然を舞台に繰り広げられる作品の数々は、描かれた時の光のきらめきや風のささやきを感じさせるほど、生き生きと表現されています。世界中の人々を魅了するこの美しい風景画が、誕生当時酷評されたことなど今では信じがたいものがありますが、それほどまでに自然を写し取る彼らの細やかな技法は革新的だったのです。
5章 印象派の人物 ―ドガとルノワール
印象派の画家の多くは風景や静物を得意としましたが、ドガとルノワールの二人は主に人物に力を注ぎました。そして人物を対象にしながら、そのポーズや動きに着目し、冷静なまなざしで一瞬の姿を画面に記録したドガに対し、ルノワールはモデルに寄り添うようにしてその生命の輝きを、豊かな色彩によって謳いあげました。対照的な個性を見せる二人ですが、長い伝統を誇る人物を中心に据えたその作品には、他の印象派の作家とは異なる、どこか古典的な趣が漂っています。
6章 ポール・セザンヌ
マネ、モネ、ルノワールなど、ビュールレ・コレクションの印象派の傑作は枚挙に暇がありませんが、中でも白眉と言えるのがセザンヌの充実したコレクションです。6点の出品作は、暗い情念を感じさせる初期のバロック的宗教画から、印象派の筆触を独自に展開させた風景画、最盛期の妻の肖像と自画像、キュビスムの先駆を思わせる最晩年の作品まで、この画家の作風の変遷を明らかにしています。そして、近代美術の金字塔ともいえる《赤いチョッキの少年》は、絵画を見ることの喜びのすべてを私たちに与えてくれます。
7章 フィンセント・ファン・ゴッホ
セザンヌと並ぶポスト印象派の代表的画家ファン・ゴッホのコレクションも大変充実しています。6点の出品作はこの画家の様式の変遷をたどるのに十分な多様性を見せていますが、それが僅か6年の間に描かれたものと知るとき、驚きと戸惑いが私たちを襲います。炎の人と呼ばれるこの画家が、いかにその短い生涯を燃やし尽くして作品を生み出したのか、6点の作品が雄弁に物語ります。そして、作者と作品とが分かちがたく溶け合い見るものに迫る、という体験もこのファン・ゴッホから始まります。
8章 20世紀初頭のフランス絵画
19世紀後半のフランス絵画は、印象派やポスト印象派の画家たちによる造形的な探求が進み、20世紀のモダン・アートへの道が用意されました。一方で、造形的な探求に飽き足らず、人間の内面に迫ろうとする画家たちも世紀末になると登場し、20世紀絵画のもう一つの方向性を示します。この章では象徴派やナビ派、綜合主義などに分類される、ヴュイヤール、ボナール、ゴーギャンといった画家たちの、時にメランコリック、あるいは謎めいた作品の数々をご紹介します。
9章 モダン・アート
この章ではピカソやブラックなど、20世紀のモダン・アートをご紹介します。ビュールレ・コレクションの大半は1940年以降の10数年間に収集されていますが、抽象絵画など当時の現代美術は含まれていません。コレクションの中で最も新しいものは20世紀初頭のフォーヴィスムやキュビスムなど、その後の絵画の急激な変貌を予兆するモダン・アートの一群の作家たちです。僅かな時間の間に目まぐるしいほどの変化を見せる彼らの作品は、20世紀初頭の絵画革命の熱気を生き生きと伝えてくれます。
10章 新たなる絵画の地平
ビュールレ・コレクションには、モネ、ファン・ゴッホ、セザンヌなどの傑作が数多く含まれており、今回、近代美術の精華ともいえる作品64点を展示しますが、そのおよそ半数は日本初公開です。なかでもモネの代表作の一つである《睡蓮の池、緑の反映》は、これまでスイス国外には一度も出たことのなかったおよそ高さ2 メートル×幅4メートルの大作です。日本でまだ見たことのないモネの「睡蓮」。門外不出といわれたモネの最高傑作をこの機会にぜひご覧ください。
関連イベント
「コレクター、エミール・ゲオルク・ビュールレとその時代」
講師 | ルーカス・グルーア(E.G. ビュールレ・コレクション財団 館長) |
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日時 | 2018年2月17日(土)14:00-15:30(13:30開場) |
会場 | 国立新美術館3階講堂 |
※逐次通訳 |
*定員260名(先着順)
*聴講は無料ですが、本展の観覧券(半券可)の提示が必要です。
*内容や日時は都合により変更となる可能性があります。あらかじめご了承ください。
NHK公開セミナー「びじゅチューン!コンサート」 井上涼の印象派ナイト
NHK-Eテレ「びじゅチューン!」を手掛けるアーティストの井上涼さんが、印象派の作品をモチーフにした曲を歌い、その作品や番組制作の過程などを紹介するミニコンサートを開催します。
出演 | 井上涼 |
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日時 | 2018年3月30日(金)、31日(土) 各回とも18:45~19:15(18:30開場) |
会場 | 国立新美術館 3F講堂 |
主催 | NHK、NHK文化センター |
*事前申込み制応募者多数の場合は抽選)
*参加無料
*応募方法等の詳細はイベントホームページ(https://pid.nhk.or.jp/event/PPG0314222/index.html)をご確認ください。
担当研究員による解説会
担当者 | 山田由佳子(国立新美術館主任研究員) |
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日時 | ①4月6日(金)14:00‐15:00(13:30開場) ②4月14日(土)14:00‐15:00(13:30開場) ※各回とも同内容です。 |
会場 | 国立新美術館3階講堂 |
*260名(先着順)
*聴講は無料ですが、本展の観覧券(半券可)の提示が必要です。
*内容や日時は都合により変更となる可能性があります。あらかじめご了承ください。
鑑賞ガイドブック
至上の印象派展 ビュールレ・コレクション ジュニアガイド
印象派の画家や作品について、わかりやすく紹介するガイドブックです。
「至上の印象派展」会場入口で、小中学生を対象にお配りしています。