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六本木アートナイト2024 小寺創太《フィラー》

六本木アートナイト2024

  • 開催中
  • パフォーマンス

六本木アートナイト2024期間中、小寺創太によるパフォーマンス/インスタレーションを展示します。<いる派>を名乗る小寺は、自らの身体を用いたユニークな作品を発表してきました。本作《フィラー》は、国立新美術館内だけでなく六本木の街中にも展開される新作です。

開催概要

開催日
時間

10:00-20:00(9月29日のみ10:00-18:00)
*天候等により早く終了する場合があります

会場

六本木交差点から国立新美術館にいたる路上、国立新美術館1Fロビー

主催

国立新美術館

お問合せ

050-5541-8600(ハローダイヤル)

作品解説

小寺創太
《フィラー》
2024
人、看板、人工芝、コンクリートブロック

小寺創太は〈いる派〉を名乗り、自らの身体を長時間にわたり展示するパフォーマンス/インスタレーションを制作してきた。しかし本作《フィラー》には、彼自身の身体は作品に含まれず、パフォーマンスは六本木駅から国立新美術館にいたる路上に配置された6人の看板持ちに委任されている。加えて、人工芝ともうひとつの看板が美術館ロビーに設置されている。

 タイトルの「フィラー」は、「埋めるもの」を意味する。この語は、隙間の充填剤、あるいは発話と発話のあいだの空白を埋める言葉——ええっと、——の呼称でもある。小寺は本作において、ある既存の枠組みや空白を埋めることを、幾重にも現実化している。

 小寺は「フィラー」の概念をフィラーテキスト——出版やデザインの分野において、レイアウトを検討する上でテキスト部分を仮に埋めておくために用いられる無内容な文章——からひきだした。路上の看板に書かれている日本語は、最も普及しているフィラーテキストのひとつ「Lorem ipsum...」のラテン語を、機械翻訳にかけて生成したものである。つまりそもそも無内容な文をさらに解体したテキストであり、何かまとまった主張を読み取ることは難しい。「労働」や「時間」といった単語が、本作のテーマを示唆するのみである。

 看板持ちは、掲示物に関わるルールの網目を埋めるようにして成立している労働形態である。広告を公道上に掲示するには規制が厳しいが、誰かの所持品であるということにすれば掲示物ではなくなる。そのために、看板の見かけ上の所持者が、まさにフィラー的に雇われるのだ。今回看板を持つのは、小寺の指示により美術館が公募し準委任契約を結んだスタッフである。一般的な看板持ちのアルバイトと同程度の謝金を受け取る彼らは、パフォーマーであり労働者でもある。

 テキストや看板持ちをはじめ、本作を構成する要素の多くは、既存の規則や慣習に従ったり、様々な関係者との交渉を経て形作られている。たとえば看板のデザインは不動産業界向けのテンプレートを流用している。看板持ちの配置場所は警察署や東京都との交渉を通して決まり、契約内容は美術館の規定に従っている。芝は導線や展示室との位置関係から導き出された最大の領域を埋めている。このように、作品の輪郭はポジティブに(内から外へ向かって)ではなく、ネガティブに(外からの線引きを引き受ける形で)形成され、同時に輪郭の内側は最大限確保されている。ただしその内側に意味や効果を求めようにも、同語反復的無内容さ——作品名が書かれた看板が作品名が書かれた看板へと誘導する——に阻まれて、肩透かしを食らうのみである。

 本作に登場しない小寺は、自らが「いる」ための場を作るのではなく、作品を構成する人、看板、芝、文字が「いる/ある/埋める」ための場所を用意する。そのようにして確保した場所を、フィラーで埋めることによって、ものの見事に蕩尽してみせるのである。

小寺創太《フィラー》 | PROGRAMS | 六本木アートナイト2024 | Roppongi Art Night 2024

作家プロフィール

小寺創太
1996年東京都出身。2021年武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻油絵コース修了。身体を空間に展示する<いる派>を標榜し、パフォーマンス/インスタレーションの新しい形式を探究する。最近の展示に「EASTEAST_TOKYO 2023」(科学技術館、2023)、「界面体」(CON_2022)、「ストーンテープ〜見たら呪われる展示〜」(PARA2022)、個展「調教都市」(Token Art Center2022)などがある。

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