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Ceramic Site 2021 Ceramic Site 2021
大原千尋 かのうたかお 清水六兵衞 國方善博 小海滝久 小松純 重松あゆみ 杉山泰平 須浜智子 堤展子 西村充 長谷川直人 堀野利久 前田晶子 南野馨
テキスト:マルテル坂本牧子
Venue
ギャラリー白 ギャラリー白3 ギャラリー白kuro
Gallery HAKU
Period
2021年5月31日(月)ー6月12日(土)
Exhibition Outline
Ceramic Site 2021 Ceramic Site 2021
Ceramic Site 2021
Ceramic Site 2020-2021 それでも、前へ マルテル坂本牧子
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、日本で最初に報道されたのは2019年の大晦日であった。それから3か月余りが経った2020年4月7日、緊急事態宣言が発令された。最初は中国、その後、アメリカやヨーロッパで猛威を振るっていた未知のウイルスによる脅威は、あっけなく日本にも上陸してしまった。1年前の今頃は、殆どの美術館・博物館が臨時休館となり、アートフェアやギャラリーでの展示も中止や延期が相次いでいた。このような未曾有の有事において、芸術や文化が真っ先に「不要・不急」のレッテルを貼られたことが、重く心にのしかかった。そして、「Ceramic Site 2020」は中止となり、2020年6月に開幕予定であった兵庫陶芸美術館開館15周年記念展「No Man's Land-陶芸の未来、未だ見ぬ地平の先」も翌春への延期が決定した。辛く厳しい時間だった。
あれから1年以上が過ぎたが、信じ難いことに「コロナ禍」はまだ続いている。私自身、結果的に、超多忙となり、夥しい量の仕事をひたすらこなしたはずなのだが、何にも実感が持てず、どうしても「失われた時間」との思いが消えない。それでも、前へ。それしかない。2021年3月20日、およそ9ヶ月遅れて、「No Man's Land」は無事に開幕することができた。「Ceramic Site 2021」も開催できることを心から祈っている。
「陶芸」や「やきもの」に付随してくる既成概念を取り払い、「まだ誰もいない、これから切り拓いていくような場所」「複数のジャンルが重なり合うような、ニュートラルな場所」に作品を据えて、21世紀の新しい陶芸表現について、未来への示唆を含むような展示がしたいとずっと考えていた。「No Man's Land」は、1970年代から1980年代生まれの作家15名によるグループ展で、「Ceramic Site」からは、かのうたかお(1974- )に参加してもらった。「No Man's Land」では、年長グループに入るかのうだが、1950年代から1970年代生まれの作家15名で構成される「Ceramic Site」では、現在、最年少となる。しかし、彼の存在を、この二つの展覧会において、それぞれ比較してみるとき、面白い「ズレ」に気づく。「Ceramic Site」では、もっとも斬新なアプローチと造形で特異な存在感を放つかのうの作品が、「No Man's Land」では、ある意味、陶芸についての、骨太な問題提起を試みる、コンセプチュアルな側面が際立つのである。
1990年代に大学で学んでいるかのうは、陶による立体造形が、切実に「美術」を志向する一方で、どうしてもその出自から、「工芸」という範疇に括られ、なかなか「美術」として認められないというジレンマを長く抱えた時代と、「工芸」という枠にとらわれず、自己の世界の中で、技術とコンセプトを徹底的に切磋琢磨することで、新しい表現を切り拓こうとする新世代の作家たちが台頭し始める2000年代以降の動向の、双方を知る世代である。かのうの代表作《壺中天アリ》シリーズは、「陶で制作することの意義」を厳しく追求してきたからこそ、生まれたものであろうし、このシリーズを通して、「あらゆる価値観を問い直す」というコンセプトを明確に打ち出すことで、旧態然としたやきものの価値観に対しての反骨精神を隠さない。素材に対しても、プロセスに対しても、造形に対しても、豪快でアクロバティックなアプローチを試みているが、その次の世代には、あまり見られない傾向なのかもしれない。
「Ceramic Site」は、関西を拠点に活動し、「現代陶芸」を牽引してきた実力派作家が一堂に会す展覧会としてすっかり定着しているが、2013年より、八代清水六兵衞(1954- )が加わったことによって、1980年代から現在まで、ダイナミックにアップグレードしてきた陶芸表現について、よりいっそう厚みを持って振り返ることが出来るようになったのではないだろうか。現在は、ジャンルの越境も珍しくなくなったが、大学で建築を学んだ清水は、いち早く建築的要素をやきものの造形に取り入れ、設計図に基づいてタタラ状の土を切り、結合させてフォルムを構築するという方法で、空間に構造物を立ち上がらせた。時には、モジュールを用いて、大型の作品にも取り組み、積極的に空間を機能させる陶芸作品を制作してきた。さらには、焼成による歪みやへたりを造形に取り入れることで、やきものの持つプリミティヴな側面を強調している。
私は、これからの、2020年代の陶芸表現を予想するとき、工芸という枠を超えて、美術や建築、デザイン、漫画、アニメーションに至るまで、現代を取り巻くあらゆる要素が加わっていく「超工芸」というような流れがある一方で、この「プリミティヴィズム(primitivism)」への揺り返しがあるのではないかと考えている。実感の持てない、不安な世の中で、この大地と繋がる土と、生身の人間の身体性を介して生まれるやきもののプリミティヴな力こそが、もっともリアリティのある表現メディアとして、大きな可能性を秘めているように思うのだ。ここでいうプリミティヴとは、「原始的、根源的」といった本来の意味だけでなく、もっと本質的で、現代的なアプローチを含むものである。「現代的なプリミティヴィズム」について、興味深い言及をしたのは、1990年、滋賀県立陶芸の森の開設記念展「土の発見-現代陶芸と原始土器」において、本展を監修した美術史家の乾由明であった(1)。ここでは、現代陶芸と原始土器との関係に焦点を当て、特に1950年代後半から現れ始める、戦後の日本陶芸におけるプリミティヴィズムの系譜について検証するものであったが、注目すべきは、考古学的事実や形式上の特徴ではなく、「プリミティヴな所産だけが持つ激しいエネルギー」が、現代にも通ずる、生きてリアルな美意識ではないかという指摘であった。土の真性とどのように向かい、各の造形へと活かしていくのか。洗練の中にもプリミティヴなエネルギーで満たされるもの。それが、陶の底力なのかもれない。
Makiko Sakamoto-Martel(兵庫陶芸美術館学芸員)
(1) 乾由明「現代陶芸とプリミティヴィズム-土の発見をめぐって」『土の発見-現代陶芸と原始土器』所収、世界陶芸祭実行委員会、1990年、pp.15-94
- Closing Days
- 日曜日休廊
- Opening Hours
- 11:00a.m. ~ 7:00p.m.
- 土曜日5:00p.m.まで
Access Information
ギャラリー白 ギャラリー白3 ギャラリー白kuro ギャラリーハク
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- 06-6363-0493 art@galleryhaku.com
Created Date:2021.6.9