ID:54590

申 京愛 展 SHIN Kyung-ae solo exhibition

Venue

ギャラリー白

Gallery HAKU

Period

2017年7月10日(月)-7月15日(土)

Exhibition Outline

申 京愛 展 シン キョンエ テン

SHIN Kyung-ae solo exhibition

申京愛(シンキョンエ)は1974年大邱(テグ)広域市生まれ。同地の慶北大学(国立)芸術学部を卒業した。2000~2001年、同校と姉妹校提携をしている長崎大学に交換生として来日、更に同大学の大学院に2002から2004年在籍、修士課程を修了する。その折の師、井川惺亮氏の指導に強く惹かれるものがあったといい、自分の絵画を徹底的に分析することを学ばされ、その結果「絵画とは何か」を深く考えるようになったという。
絵画は2次元の中に置かれた単なる絵具の塊(かたまり)でありながら、その配置により三次元の幻想(イリュージョン)を作り出し、そこに風景や具体的な静物を存在するかのように見せる。それはいわば錯視であると彼女はいう。錯視により実物のように見えてもそれは絵具の表面の物質でしかなく、絵画の「リアリティ」は私たち人間の不明確で不完全な視覚による認識に基づいていると彼女はいうのだ。
そこで申京愛は絵画制作において、その絵画の不明確さ、不完全な認識をテーマに追求するようになり、それが本展の表題にもなっている「ニュートラル」の意である。したがって当初、彼女は色を使わず、絵具は白と黒、その間にある無限の中間色を用い、題材には「フォーク」を選んでいた。長崎の留学時代に「フォーク」が日本の「箸」と韓国で使用する「スプーン」の中間にあたることに気づいたからだという。立体作品の展開においては、この「フォーク」を紙で制作し、天井から横向きに吊り下げることで、「中間」性、半透明で弱弱しい「フラジャイル」性を強調、彼女のいう「ニュートラル」性という概念が顕著に示された例がある(岩美現代美術展Studio652、鳥取2012)。
今回は、「シアノタイプ」の作品により本展を構成するという。この「青写真」シリーズともいうべきものは、彼女が2008年頃から手掛けている。「シアノタイプ」とは紙に感光液を塗り、上に立体作品や半透明な紙で作ったものを置いて太陽の下で感光させ、水で洗って定着させるというものである。「もの」があったところは感光液が流れて白くなり、「もの」が無かったところは感光して青く紙に定着する。すなわち視覚が逆転されたかたちで提示されるわけであり、そこが彼女の今回の表題でもある「ニュートラル」性の追求なのである。
太陽の強さ、紙の選択により彼女の求める作品の質はなかなか得られず、そこに彼女の苦労と格闘があるらしい。しかし彼女は2012年和紙と出会って、その軽さ、薄さにも関わらず千年を耐える強靭さも備えていることに感動、作品のコンセプトの展開や質を上げる契機となったようだ。2016年には岩美(鳥取)において因州和紙を感光させたシアノタイプの作品を吊り、人が歩くことによって生じる空気の動きも和紙作品の揺れによって感じさせるという試みにも挑戦していた。
感光液については当初は丁寧に塗布していたそうだが、ある時子どもたちのワークショップの際、子どもたちの感光液の子どもらしい即興性、不完全さに触発されて自身も身体性を入れるようにしたそうである。題材についてはフォークとすぐわかる形状のものも多いが、ブラッシュワークのようなもの、光を意識的に取り込んで抽象性を生かしたものなどもあり、おそらく紙で作ったフォークの形状のものを折りたたんだり、折り返したり、左右対称に展開したものなど、さまざまな形状にこのテーマを発展させてきている。
一方で、彼女は、今、作家がすべて作品をコントロールするのではなく、その気持ちをおさえつつ自然に任せて制作するようになったともいい、自然が私に作品を作らせるといってもいいという。
もとよりインスタレーションにも長けた作家である。その一室を緊密な構成に基づき展示してくるであろう。その仕掛けが楽しみでもあり、それを日本の観者がどれだけ受け止めるかも興味深いところである。
越智裕二郎(西宮大谷記念美術館長)

Opening Hours
11:00 ~ 19:00
土曜日11:00-17:00

Access Information

ギャラリー白 ギャラリーハク

Gallery HAKU

Address
〒530-0047
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Website
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General Inquiries
06-6363-0493 art@galleryhaku.com
Updated Date:2017.6.27
Created Date:2017.6.27