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田名網は2000年代から江戸時代に作られた無数の手足によってすべての人を救うという《千手千足観音立像》(正妙寺蔵)や、あらゆる願いを叶えるという鎌倉時代の《如意輪観音坐像》(奈良国立博物館蔵)など、奇想の仏像に着想を得た立体作品を制作している。《綺想体》では複数の顔が積み重ねられており、それぞれが何かを問いただすかのような強いまなざしでこちらを見つめてくる。ドクロやクモ、鶏、金魚などが一体化され、まるでひとつの命をもつように見える奇妙な存在は、田名網が考える極楽浄土の世界に住まう生き物を想起させる。実際には急勾配で渡ることができない反り橋の上に鎮座する生き物は、まるであの世とこの世の門番のように、見る者の前に立ちはだかっているかのようだ(cats. 10-27, 28)。