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《Crayon Angel》
1975年に完成した本作では、60年代の田名網作品を彩ったポップなモチーフは背後に退き、戦争のイメージが強烈な印象を与える。爆風に吹かれる女性や、空襲を知らせるサイレンにおびえてけたたましく鳴き声をあげる鶏は、田名網の実際の記憶に基づくモチーフである。榎本健一など戦前のコメディアンたちが笑う姿や、作家自身の幼少期の写真は、格子のようなフィルター越しに現れ、制作時の田名網と幼少期の記憶との距離が表現されている。終始続く心臓の音はこの作品の内省的な性格を示しており、作者である田名網が記憶の深層へと降りてゆくさまを見る者に追体験させるような効果を生んでいる。