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No. 51 サミュエル・ファン・ホーホストラーテン《部屋履き》

17世紀オランダの画家サミュエル・ファン・ホーホストラーテンは、美術理論家としても活動しました。オランダ市民の家の室内を描いたこの作品には、彼が精通した遠近法が巧みに用いられており、私たちの視線は絵画空間の奥へと導かれます。戸口の向こうに3つの部屋が連なっていますが、住人の姿がどこにも見えず、奇妙な感覚にとらわれます。しかしよく観察すると、意味ありげなモチーフに気付くでしょう。ひときわ目を引くのは、慌てて脱ぎ捨てられたかのように床に散らばる部屋履きです。また、奥の扉の錠前には鍵が差し込まれたままになっています。この家の女主人は自分がすべきことを途中で投げ出し、どこかで不謹慎な愛の誘惑に身をゆだねているのでしょうか…。密やかなエロティシズムが独創的な画面構成と相まって、私たちの好奇心をそそります。