No. 4 アントワーヌ・ヴァトー《ニンフとサテュロス》
自然の精であるニンフと半人半獣のサテュロスが登場するエロティックな情景は、ティツィアーノ、ルーベンス、ヴァン・ダイクなど、名だたる画家たちによって描かれました。18世紀前半に活躍したフランスの巨匠ヴァトーによる本作は、この系譜に連なるものです。欲望に駆られたサテュロスは、無防備に眠るニンフの体からベールをそっと持ち上げ、美しい裸身にみとれています。このような一方的な眼差しの表現は、恋愛を題材にした神話画にしばしば見いだされます。ヴァトーは、男性/女性、目覚めている/眠っている、褐色の肌/白い肌といった対比を巧みに用いて、官能的な緊張感を強調しました。