2000平米の展示室と野外展示場も使い、約210点をご紹介します。展示される作品は、絵画、彫刻、ドローイング、水彩、版画、写真、映像、と、イケムラが手掛けてきたすべてのメディアを網羅します。また、文学にも豊かな資質を発揮しているイケムラの詩も、会場内にちりばめられる予定です。
イケムラレイコ 土と星 Our Planet
展覧会概要
長くヨーロッパを拠点に活動し、国際的にも高い評価を得ているイケムラレイコの大規模な個展を開催いたします。
イケムラレイコは、1970年代にスペインに渡り、その後スイスを経て、1980年代前半からはドイツを拠点に活躍してきました。絵画、彫刻、ドローイング、水彩、版画、写真など、イケムラが手掛けるメディアは多岐にわたります。それはイケムラが、何かが生まれる途上に潜在している、いまだはっきりとは見えない無限の可能性を表現するという独創的な芸術的課題に、多様なメディアをもって挑んできたことの証でもあるでしょう。本展覧会では、そのような不可能にも思える目標に真摯に取り組んできたイケムラの創造の軌跡を、約210点の作品とともにご紹介します。
スイスで本格的に画家としての活動を開始したイケムラは、1983年にドイツに移りました。当時の絵画を席巻していたのは、力強い色とかたちで、人間の生の感情を表出する新表現主義と呼ばれる動向でした。イケムラもまた、女性であること、そして異邦人であることの困難に抵抗するかのような荒々しい絵画や、多様な線で構成されたユーモラスで人間味あふれるドローイングなど、実験的な試みに没頭しました。そうした制作を経て、1990年代以降に現われてきたのは、名もない小さな動物や無垢な少女たち、母と子、木々や山と一体化した人物、誕生と死を含みこむ神話的な原始の風景などでした。
人や自然をコントロールし、体系化することによって成り立つ今日の社会は、自然災害だけでなく、原発の事故など、人が作りだしたさまざまなひずみによって揺さぶられています。うつろな空間に漂うはかなげな少女や、現代美術で正面から取り上げられにくかった母と子の像、そして、幻想的な、自然と一体化した小さな生きものたちのすがたには、この世に生まれでた、あるいは、これから生まれいづるものたちの存在の多様性を、あるがままに受け入れようとする強靭な思想が感じられます。寡黙でささやかな、自らのうちに深く沈みこんでいく内省的な作品世界は、まさにこの点において、きわめて今日的な批評性に満ちています。それは、日本とヨーロッパという異なった土壌で鋭敏な感覚を磨いてきたイケムラだからこそ見出しえた、啓示に満ちた景色でもあるでしょう。
2011年に東京国立近代美術館と三重県立美術館で開催された「イケムラレイコうつりゆくもの」展以降、イケムラは、社会に向き合う態度をより意識するようになったといいます。本展覧会は、独創的な創造活動により、破綻しかけた社会の構造にまで切り込もうとするイケムラの芸術をたどりなおし、多面的に追体験できるように、16のインスタレーションの集合として構成されています。展覧会のクライマックスには、近年の総合的な世界観を、神話的な空間に表出した大型の風景画の部屋が現われます。展覧会を通じて、そうした景色の向こうに広がる世界を、多くの来場者とともに考えることができれば幸いです。
会 期 |
2019年1月18日(金)~4月1日(月) 毎週火曜日休館 |
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開館時間 |
10:00~18:00 ※毎週金・土曜日は20:00まで ※入場は閉館の30分前まで |
会 場 |
国立新美術館 企画展示室1E 〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2 |
主 催 | 国立新美術館、バーゼル美術館 |
後 援 | スイス大使館 |
観覧料(税込) |
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お問合せ | 03-5777-8600(ハローダイヤル) |
展覧会の見どころ
1. これまでで最大規模の個展
2. 16のインスタレーション
展示会場は、イケムラが探求してきた16のテーマに基づく、16のインスタレーションで構成されています。観客には、これらのインスタレーションをめぐり歩く道しるべとなる地図を配布する予定です。展示構成を手掛けたのは、これまでにイケムラと何度もコラボレーションしている建築家のフィリップ・フォン・マットです。
3. 初期のドローイングと絵画
1973年からスペインのセビリア大学美術学部で学んだイケムラは、1979 年にスイスに移り、現代美術家としての活動を本格的に開始しました。本展覧会には、作家にゆかりの地であるスイスから、初期のドローイング約40点や表現主義風の大型の絵画がやってきます。これらの作品群には、近作にいたるまでの変わらぬイケムラの関心を垣間見ることができます。
4. 近年の新たな試み
イケムラの絵画は、近年、ふたたび大型化しています。山水画を思わせる幽玄の景色には、人や動物のすがたが溶け込んでいます。最新作《うねりの春》は、生命の高揚を感じさせる春のモティーフにふさわしく、明るく暖かい色彩をベースにしています。大きな空間いっぱいに広がる風景画と、身も心も一体化する体験をお楽しみください。
5. イメージの連鎖
イケムラの作品では、人や動物、木々や山がかたちを変え、あるイメージからまた別のイメージへとつぎつぎに変化していきます。イメージは、見る人の記憶や精神状態に呼応して、見え方を変える柔軟性をそなえています。本展覧会では、イケムラのヴィジョンを追体験するだけでなく、自分だけのイメージを紡ぎだすこともできるでしょう。
展覧会の構成
本展覧会は、ひとつひとつが独立したインスタレーションでもある16のセクションで構成されます。
1. プロローグ|Prologue
2. 原風景|Origin
3. 有機と無機|Organic and Inorganic
4. ドローイングの世界|Realm of Drawings
5. 少女|Girls
6. アマゾン|Amazon
7. 戦い|War
8. うさぎ観音|Usagi Kannon / 10. 庭|Garden
9. 山|Mountains
11. 木|Trees
12. 炎|Flame
13. 地平線|Horizon
14. メメント・モリ|Memento Mori
15. コスミックスケープ|Cosmicscape
16. エピローグ|Epilogue
関連イベント
レクチャー「イケムラレイコの素描について」
講師 | アニータ・ハルデマン(バーゼル美術館版画素描室ヘッド・キュレーター) |
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日時 | 2019年1月18日(金) 13:30-15:00 (13:00開場) |
会場 | 国立新美術館3階 研修室AB |
※逐次通訳 |
*定員70名(先着順)
*聴講は無料ですが、本展の観覧券(半券可)の提示が必要です。
*内容や日時は都合により変更となる可能性があります。あらかじめご了承ください。
スペシャルトーク
講師 | イケムラレイコ × ヨーゼフ・ヘルフェンシュタイン(バーゼル美術館館長) |
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日時 | 2019年1月18日(金) 16:00-17:30 |
会場 | 国立新美術館1階 展示室1E |
※逐次通訳 |
*定員100名(先着順)
*聴講は無料ですが、展示室の入場には本展の観覧券が必要です。
*内容や日時は都合により変更となる可能性があります。あらかじめご了承ください。
ギャラリートーク
講師 | 長屋光枝(国立新美術館学芸課長) |
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日時 | 3月8日(金)18:30~ 3月9日(土)14:00~ 3月15日(金)18:30~ 3月16日(土)11:00~ |
会場 | 国立新美術館1階 展示室1E |
*各回40分程度
*聴講は無料ですが、展示室の入場には本展の観覧券が必要です。
*内容や日時は都合により変更となる可能性があります。あらかじめご了承ください。
《うさぎ観音》 特別無料開放
日時 | 2019年3月10日(日) 10:00~18:00(最終入場17:30) |
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会場 | 野外展示場E(入口は乃木坂チケット売り場の横です) |
*野外展示場Eの入場は無料ですが、展覧会の入場は有料です。
*内容や日時は都合により変更となる可能性があります。あらかじめご了承ください。
野外展示場にある《うさぎ観音》 は東日本大震災への祈りも込めて作られた作品です。3.11の前日となる3月10日(日)に限り、間近で鑑賞できるよう野外展示場を特別に無料開放いたします。
*通常、《うさぎ観音》は展示室内からガラス越しに鑑賞いただいています。
展示室の《うさぎ観音Ⅱ》は胎内に入ることもできますのでこちらもお見逃しなく! (観覧券が必要です)
当日、イケムラ展ご来場の先着100名様に企画展示室1E入口にて《うさぎ観音》のポストカードをプレゼントいたします。
鑑賞ワークショップ「みて・よんで・みる・イケムラレイコ展」
「イケムラレイコ 土と星 Our Planet」展の会場内には、絵画や彫刻、ドローイングなどの作品に加え、イケムラレイコ自身による詩がちりばめられています。イケムラの創造活動について知るうえで、彼女の詩のことばも重要な要素です。このワークショップでは、イケムラの詩をよみながら展覧会を鑑賞し、参加者同士で感じたことや考えたことを語り合います。
日時 | 2019年3月16日(土)13:00~15:15 |
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会場 | 国立新美術館 企画展示室1E |
定員 | 15名 ※事前申込制です。 ※参加は無料ですが、本展の観覧券(開催当日の半券も可)の提示が必要です。 |
申し込み方法 | 3月8日(金)締切の予定でしたが、定員にまだ余裕がありますので、3月12日(火)12:00まで受付期間を延長いたします。 申し込みフォームより、2019年3月12日(火)12:00までの期間に申し込み手続きを行ってください。 受付終了しました ※定員を超える応募があった場合は、3月8日(金)12:00以降の応募者の方の中で抽選とさせていただきます。 ※参加の可否については、申し込み受付締切以降にEメールでご連絡します。 ※必要事項に記入漏れがある場合、受付をお断りすることがあります。 ※申し込み時にご記入いただいた個人情報は本ワークショップ実施のために使用し、それ以外の目的で使用することはありません。 |
詩の朗読会 - イケムラレイコの詩を聴く
日時 | 3月22日(金)①16:00~/ ②17:30~/ ③18:30~ |
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会場 | 国立新美術館1階 企画展示室1E |
*各回15分程度。
*朗読はイケムラレイコのほか、ゲストに川口晴美(詩人)、坪井美香(俳優)を迎え、各回内容は異なる予定です。
*聴講は無料ですが、展示室の入場には本展の観覧券が必要です。
*内容や日時は都合により変更となる可能性があります。あらかじめご了承ください。
イケムラレイコは詩の創作にも意欲的に取り組んでおり、本展会場でも詩のテキストが随所にあります。作家本人とゲスト朗読者によるイケムラレイコ自作の詩の朗読会を展示空間の中で行います。イケムラレイコの世界を目と耳で、そして全身で存分に味わってください!
※実施場所等、詳細については当日、企画展示室1E入口の案内をご覧ください
スペシャルトーク「イケムラレイコ 土と星 Our Planet」展に託した思いについて
講師 | イケムラレイコ × 水沢勉(神奈川県立近代美術館館長) |
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モデレーター | 長屋光枝(国立新美術館学芸課長) |
日時 | 2019年3月24日(日)15:30~17:00 |
会場 | 国立新美術館3階 講堂 |
*※定員260名(先着順)
*共催 女子美術大学
*聴講は無料ですが、本展の観覧券(半券可)の提示が必要です。
内容や日時は都合により変更となる可能性があります。あらかじめご了承ください。
巡回情報
本展覧会は、スイスのバーゼル美術館と共同で企画するものです。東京展を再構成した巡回展が、2019年春から夏にかけてバーゼル美術館で開催される予定です。