21世紀に入り、草間彌生は日本の前衛芸術家としてはこれまでほとんど例を見ないような高い評価と人気を獲得し、国内外で数々の栄誉を受けるようになりました。「世界で最も影響力のある100人」(2016年、米『タイム』誌)に日本人で唯一選出、「世界で最も人気のあるアーティスト」(2014年、英『アート・ニュースペーパー』紙)に選出されたことは記憶に新しいでしょう。テート・モダン(ロンドン)やポンピドゥ・センター(パリ)など世界に名だたる美術館での個展を成功させ、中南米やアジア、北欧でも大規模な展覧会を行うなど多くに人々を魅了し続けています。
一方で、草間彌生の芸術家としての歩みは緩まることはありません。花やかぼちゃをモティーフとした生命力溢れる彫刻作品、そして色鮮やかな色彩を大胆に駆使した絵画作品が、今この瞬間も生み出されているのです。
国立新美術館開館10周年
草間彌生 わが永遠の魂
展覧会ホームページ:http://kusama2017.jp/
展覧会概要
世界を舞台に活躍する前衛芸術家、草間彌生(1929年-)。1950年代後半に単身ニューヨークに渡って以降、絵画、彫刻、インスタレーション、映像、さらには小説に至るまで、広範な活動を展開してきました。デビュー以来一貫して時代の最先端を走り続け、今なおその創作意欲はとどまるどころか、さらに加速しています。近年では欧米、中南米、アジア、そして日本など世界各地で大規模な個展を次々と成功させており、今や「日本が生み出した最も傑出したアーティスト」といっても過言ではないでしょう。本展では、2009年から草間が精力的に取り組んでいる大型の絵画シリーズ「わが永遠の魂」のうち日本初公開作品約130点を中心に据え、初期から現在に至る創作活動の全貌を約270点の作品によって総合的にご紹介します。
会 期 |
2017年2月22日(水)~5月22日(月) 毎週火曜日休館 ただし、5月2日(火)は開館 |
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開館時間 |
10:00~18:00 金曜日は20:00まで
※4月29日(土)~5月7日(日)は毎日20:00まで開館 ※入場は閉館の30分前まで |
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会 場 |
国立新美術館 企画展示室1E 〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2 |
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主 催 | 国立新美術館、朝日新聞社、テレビ朝日 | ||||||
協 賛 | 鹿島建設、岡村印刷工業 | ||||||
協 力 | 草間彌生スタジオ、パナソニック、TOKYO FM | ||||||
観覧料 |
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お問合せ | ハローダイヤル 03-5777-8600 |
関連イベント
記念講演会「オブセッションと救済 ― 草間彌生の世界」 ※終了しました。
講師 | 建畠 晢氏(多摩美術大学学長・埼玉県立近代美術館館長) |
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日時 | 2017年3月4日(土)14:00~15:30(13:30開場) |
会場 | 国立新美術館3階講堂 |
定員 | 先着260名(先着順、申込不要) |
※聴講は無料。本展の観覧券(半券可)が必要です。 |
展覧会の構成
第一部:21世紀の草間彌生
- ◎わが永遠の魂
- 「わが永遠の魂」は2009年に着手され、現在も描き続けられている大型の絵画連作です。初期にはF100 号(162.0×130.3cm)やS100号(162.0×162.0cm)も見られましたが、現在ではS120号(194.0×194.0cm)にほぼ統一された正方形のカンヴァスに、アクリリック(アクリル絵具)を用いて、色彩豊かな画面が驚異的なハイペースで次々と生み出され、500点に及ぶ最大のシリーズとなっています。この連作の最大の特徴は驚くべき多様性です。具象的なモティーフと抽象的なパターンを自在に往還しながら更新され続ける作品群は、草間彌生の芸術の集大成であり、天才的な創造性を体現するものと言えるでしょう。
第二部:20世紀の草間彌生
- ◎初期作品
- 幼少の頃より絵を描くことが好きだった草間彌生は、京都市立美術工芸学校で日本画を学び、故郷の松本で創作活動を開始しました。1950年代に描かれた作品は、抽象的でありながら、動植物、人間、天体、都市など、多岐にわたるモティーフをテーマに、生命感と宇宙的な広がりを感じさせます。批評家・瀧口修造らに高く評価され、東京でも何度か個展を開催しました。
- ◎ニューヨーク時代
- 日本での芸術活動に限界を感じた草間は、1957年秋に単身アメリカに渡り、翌年にはニューヨークに居を移します。草間が最初に高い評価を受けたのは、巨大なカンヴァスを小さな網目状のストロークで埋め尽くした、中心も際限もなく、構成を排除したモノクロームのネット・ペインティングでした。その後、男根状の突起を家具などにびっしり貼り付けたソフト・スカルプチュア、同一物の集積/反復によるアキュミュレイション、オブジェやイメージによって空間を埋め尽くすエンヴァイラメント(インスタレーション)、ハプニング(パフォーマンス)など、性や食品に対するオブセッション(強迫観念)を主題とした先駆的な作品を矢継ぎ早に発表し、注目を集めます。
- ◎東京時代
- 体調を崩し、1973年に帰国した草間は、東京で入院生活を送りながら活動を再開します。絵画や彫刻、インスタレーションにおいては、水玉、ネット、男根状の突起など従来のモティーフを大胆に再解釈し、具象的なイメージと組み合わせた色彩豊かな作品が生み出されました。コラージュ、版画、小説、詩といった文学作品など、新しい分野にも挑戦します。性、死、無限の宇宙などの普遍的なテーマにもとづくこれらの作品は、率直な表現によって新しい観客を獲得しました。コラボレーションやタイアップも数多くおこなわれ、草間の作品世界はますます広がり21世紀へとつながっていきます。